「できた」で作りたいママと赤ちゃんの笑顔 トライマグ開発秘話

赤ちゃんの「できた!」「うれしい!」「やってみたい!」の気持ちをはぐくむ、リッチェルの「トライマグ」。今年3月*に発売したところ、大好評。
そんな「トライマグ」を企画した、ベビー用部品 企画課の中村さんと、対談のお相手として、べびちぇる編集部の今牧さんに、開発秘話について聞きました。
(*2017年3月発売)

(左:ベビー用部品 企画課の中村さん 2児のパパ。右:Web管理課の今牧さん 同じく2児のパパ。)

新しい「トライマグ」は今までのマグとどう違うの?

発売から大好評のトライマグですが、いったいどんな商品なのでしょうか。
今までのマグとはどう違うのでしょうか。

成長シーンにあわせた3種類の飲み口が特徴の「トライマグ」

- 早速ですが、「トライマグ」について教えてください。

中村さん:成長シーンに合わせた飲み口が3種類あるのが特徴です。

離乳食がスタートする5ヶ月頃からの利用を想定したスパウト(スパウトの特徴は後述)、
7ヶ月頃からのストロー
8ヶ月頃からのコップ飲み用があります。

飲みものを入れるボトルは、プラスチックボトルとステンレスボトルの2つがあります。
各ボトルは、3つの飲み口すべてに対応しているので、家ではプラスチックボトル、お出かけのときはステンレスボトルにつけかえて利用することもできます。

今牧さん:成長シーンと利用シーンに合わせていろいろな組み合わせができるのがいいですよね。

今までもあった「アクリア」のシリーズと、何が違うの?

- 「トライマグ」は今年3月にリッチェルベビーの商品に仲間入りしましたが、リッチェルベビーには「アクリア」というシリーズの赤ちゃん用マグがあります。その「アクリア」ではなく、「トライ」シリーズでマグをつくろうと思ったきっかは?

今牧さん:「トライ」はもともと、リッチェルベビーの食器のシリーズです。

「Training=トレーニング」
「Learning=ラーニング(学ぶ)」
「Interesting=インタレスティング(興味・楽しみ)」
の頭文字をとった「TLIトライ」シリーズ。

そうそう、なぜ、「アクリア」のシリーズとして商品企画をしなかったのか。

中村さん:コンセプトの違いですね。

まず、アクリアの話をすると・・・。

赤ちゃん用のマグってオシャレなものがあんまりないんですよ。

- 確かに、赤ちゃん用マグは、半透明のプラスチックボトルにキャラクターのイラスト、というものがほとんどですね。

中村さん:マグは赤ちゃんとのお出かけの必需品です。これまでのマグにはないようなおしゃれなマグを目指しました。赤ちゃんとお出かけするときに、ママの気持ちがちょっと嬉しくなるような。
「アクリア」は、赤ちゃん用のマグとしての機能性に加え、ガラスのような透明感のあるボトル、おしゃれな柄も取り入れ、見た目にこだわりました。

また、プッシュボタンを押すと飲み物がストローから出てくる、赤ちゃんに飲み物を飲ませやすいような仕掛けもあります。

ガラスのような透明感のあるボトルが人気のアクリア。押すと飲み物が出てくるコップでマグストロータイプも。

こんなふうに、アクリアには、赤ちゃんにとっての飲みやすさに、プラス、ママや家族の育児を楽しくサポートしたい、という思いを込めています。

トライマグも、もちろんデザインや大人が赤ちゃんをサポートしやすい工夫をとりいれていますが、赤ちゃんがマグを使って自分で飲み物を飲めることをより重視しました。

赤ちゃんが「自分でできる」を実現するために

今までのマグよりも、より、赤ちゃんが自分で飲み物を飲めることを重視した「トライマグ」。
「自分でできる」を実現するために、どのような工夫を施されてきたのでしょうか。

赤ちゃんが自分で「飲めた!」「できた!」を実現するマグ

- 赤ちゃんが「自分で飲む」ことを重視。

中村さん:そうです。赤ちゃんの「自分でできたよ」という気持ちを「うちのマグを使って飲み物を飲む」ことで育てたいなあと。

今牧さん:「トライ」のコンセプトとピッタリだったのですね。

中村さん:はい。赤ちゃんの成長シーンにあわせて、「スパウト飲み」「ストロー飲み」「コップでの直飲み」の3つのステップそれぞれで、「できた!」「うれしい!」「やってみたい!」をサポートしたいと思いました。

ストローよりも2ヶ月早く始められる「スパウト」をもっと飲みやすいものに

中村さん:スパウトって知っていますか?

- 私は、自分の子どもが赤ちゃんの頃はスパウトを知らず、ストロータイプの飲み口のものからスタートしました。スパウトってどんなものですか?

中村さん:スパウトは、お母さんの乳首やほ乳瓶の乳首から、ストローやコップでの直飲みまでの途中段階で使う飲み口です。
赤ちゃんが口をすぼめて、ストローで飲めるようになるのは生後7ヶ月頃ですが、スパウトは幅広でくわえやすい形になっているので5ヶ月頃の赤ちゃんにも使ってもらえます。

今牧さん:5ヶ月頃の赤ちゃんは口を狭めるのはまだ難しいのですが、スパウトであれば、パクっとくわえることができますからね。母乳やミルク以外で、ちょっと水分補給をさせたいといった時にも便利です。

- なるほど。私は、子どもがストロー飲みをできるようになるまでの間、小さなカップにお茶を入れて飲ませていました。ほとんど口の端からこぼれていましたが(苦笑)。スパウトを知っていれば使ってみたかったです。

中村さん:調べてみたところ、スパウトを持っている方は4割ほど。ストローマグほど定番化していないけれど、持っている方は結構いらっしゃることが分かりました。

そこで、リッチェルが定期的に開催している「ママ座談会」でスパウトを使っている方に使い勝手についてヒアリングをしたところ、

「とりあえずスパウトつきのマグを買ってみたけれど、うまく飲ませることができない」
「うまく飲ませることができなかったので、いつの間にか使わなくなった」

という声が多く聞かれました。

- スパウト飲みがうまくいかないのは、何が悪かったのでしょうか?

赤ちゃんは自分ではこんなふうにマグを傾けることができない

中村さん:従来のスパウトは、ほ乳瓶のように、マグを傾けないと飲み物がでてこない構造になっていました。

赤ちゃんが自分の手でマグを持てるように、マグにハンドルがついているものが多いですが、そもそも、生後5ヶ月頃の赤ちゃんは、マグを自分の手で持って、ちょうどよい角度に傾ける、という動作がうまくできません。

- 大人がマグを傾けてあげればスパウトで赤ちゃんが飲み物を飲めるのかもしれませんが・・。

中村さん:そこにギャップがあったのだと思います。大人は、スパウトマグもストローマグのように「赤ちゃんが自分で飲むトレーニングに使いたい」と思っているけれど、赤ちゃんが自分で飲めるようなつくりになっていなかったという。

- スパウトに需要はあるものの、使い勝手が悪いことから、ストローマグほどは定着していないのですね。

中村さん:はい。せっかくスパウトを開発するのなら、「実際に使ってもらえる」ものにしたいなあと。

逆転の発想で実現した、傾けなくても飲めるスパウト

- 具体的にはどのような工夫をされたのでしょうか?

中村さん:赤ちゃんの「自分で飲めたよ」をサポートするために、この「マグを傾けたときの問題」を解決したいと思いました。

そう考えているうちに、「傾けなくても飲めるようにしたらよいのではないか」と思いつき、スパウトの先にストローをつなげて傾けなくても赤ちゃんが吸うだけで飲み物が出てくるようにしました。

- 逆転の発想ですね。

今牧さん:スパウトにストローをつけるって、よく思いつきましたよね。

中村さん:企画チームで何度も話あっているうちに思いつきました。ストローをつけてからも試行錯誤の繰り返しです。赤ちゃんがマグのハンドルを自分で手に持って、おっぱいを飲むくらいの力で吸い上げることができるように改良を重ねました。

- 赤ちゃんが自分でできることをサポートする「トライ」のコンセプトを「スパウト飲み」で実現できたのですね!

「漏れないマグ」へのこだわり

- スパウト以外にも、開発で工夫したことや大変だったことはありますか?

中村さん:赤ちゃん用マグに絶対に必要な、漏れ対策。
漏れ対策については、「アクリア」で培ってきたものがあったので、その技術をトライマグにも応用しました。

蓋をして漏れないのは当然。赤ちゃんが振り回しても、倒しても漏れないようになっています。

また、夏場はマグの内圧が高くなって、ストローから飲み物がピュっと出てしまうので、飛び出しを起こさないように、うまく圧抜きをしています。

今牧さん:この構造をつくるのは、大変だったと聞きました。

中村さん:はい。なかなか難しかったのですが、試行錯誤の末、カバーを開けると同時に容器内の圧力が抜ける独自のバルブ構造をつくることができました。特許も申請中です。

部品が多いのはイヤ!お手入れしやすいシンプルさ

- 「漏れ対策は万全」と聞くと、マグから飲み口や部品を外して洗ったあとの組み立てが大変そうなイメージが。漏れないように複雑なつくりになっているのかなあと・・・。

中村さん:その点も大丈夫ですよ。部品は5つだけで、複雑なつくりにはなっていません。

分解をして洗って、セットする時に「あれ、この部品、どこにつけるのだろう」と迷うことがないように、部品の数を少なく、シンプルな形にするということを心がけました。

お手入れのしやすさにも気を配りました。
部品の凹凸をなくして水がたまらないようにしています。


また、すべての部品を、煮沸消毒・食洗機洗浄することができます。
(*ステンレスマグは不可)

- 不器用ママでも安心ですね。

ストローやコップ飲み用の飲み口にも工夫がいっぱい

中村さん:スパウトだけでなく、ストローやコップ用飲み口も赤ちゃんにとっての飲みやすさにこだわりました。

今牧さん:ストローは、楕円形状でやわらかいですよね。赤ちゃんが抵抗なく口にいれてくれた、という感想をよく頂きます。

中村さん:コップ飲み用は、小さなお口にフィットする飲み口形状になっています。飲み物がちょっとずつ出てくるようになっているので、むせずに上手に飲むことができます。

- ストロー飲みトレーニングも、コップ飲みトレーニングも、楽しく、スムーズにできますね!

大人気のステンレス製保冷ボトルのマグを実現

トライマグシリーズが支持されるもう一つの理由として、ステンレス製の保冷ボトルを選べることがあります。街角でも使っている赤ちゃんを見かける、リッチェルのステンレス製マグの実現にも、一苦労がありました。

夏のお出かけ先でも、赤ちゃんに、衛生的な冷たい飲み物を

- トライマグシリーズには、ステンレス製のマグもありますよね。赤ちゃん用のマグでステンレス製のものはあまり見かけません。

中村さん:ここ数年で、ステンレス製のマグに飲み物をいれて外出、というのが大人には定着していますよね。赤ちゃん用のお出かけ用マグにもステンレス製のものがあれば喜んでもらえるだろうな、という予想はあり、それを、トライのコンセプトにあてはめてみました。

- 率直なところ、ステンレスマグの売れ行きはいかがですか?一般的な赤ちゃんマグと比べると値段も高いですよね。

中村さん:トライマグには、「種類の飲み口+プラスチックボトル」と「種類の飲み口+プラスチックボトル+ステンレスボトル」というふたつのセット商品があります。
このうち、よくお買い求め頂くのは、ステンレスマグ入りの方なのです。

- 意外でした。普通のプラスチックマグを使っているうちに、「やっぱり保冷できるものもあったらいいな」と思ったときに買い足すのかな、と思っていました。

今牧さん:やっぱり、親目線で考えても、赤ちゃんには、ぬるくなった飲み物ではなく、衛生的で、ちゃんと冷たい飲み物を飲ませてあげたいですよね。
「これはお出かけのとき用にあったら便利だな」と、利用シーンを想像しやすいのかもしれません。

- 赤ちゃんと一緒のお出かけは大変なことも多いですが、水分補給の心配がないことで、赤ちゃんもママも安心して、ニコニコしてお出掛けできますね。

プラスチックメーカーが、ステンレス製に挑戦

- リッチェルは、プラスチック製品を作るのが得意な会社です。ステンレス製のものをつくることへのハードルは高かったのではないでしょうか。

中村さん:これまでステンレス素材を部品として使うことはあっても、ステンレス製のボトルをつくるのは初めてでした。
まずは、ステンレスボトルを、リッチェルが求める品質で作ることができる工場を探すところからスタートしたので、なかなか大変でした。

しかし、もともと、リッチェルが新しいことへのチャレンジを応援する社風であることや、トライのコンセプトにぴったりマッチした商品企画だったため、開発当初から会社からの全面的なバックアップがあり、なんとか形にすることができました。

- 新商品の企画から製造、販売まではどんなふうに動くのですか?

中村さん:私たち企画チームだけでは商品はつくれません。
企画チームが考えたアイディアを実際に形にしてくれる、設計・技術・製造部門と一体となって商品化を行います。
また、トライマグをひとりでも多くの方に手にとってもらえるように、広報や営業部門もメディアや店舗にと走り回っています。

他にも様々な部門がありますが、たくさんのメンバーが連携して、商品を作っています。

- これからも暑い日が続くので、ぜひ、ステンレスつきマグを持って、赤ちゃんと楽しくお出かけをしてほしいですね。

予想以上の売れ行きで嬉しい悲鳴

より多くの方のお手元に届けるために

中村さん:今、トライマグ全般が予想以上の売れ行きで、生産が追い付いていないといった嬉しい悲鳴をあげています。早く、たくさん生産できるような体制をとり、たくさんの赤ちゃん、ママや家族に届けたいと思います。

赤ちゃんが「自分でできたよ!」と嬉しそうな顔をしたり、自慢気な顔をしたりするのを見ると、ママや家族も思わず笑顔になります。
育児は大変なことも多いですが、赤ちゃんの笑顔で、家族みんなが笑顔になれるお手伝いができれば嬉しいです。

- 中村さん、今牧さん、今日は「トライマグ」の開発秘話をお話頂きありがとうございました。
これからも、赤ちゃんの、「できる」、「嬉しい」、「やりたい」、「楽しい」という気持ちと、家族の笑顔に繋がる商品開発を楽しみにしています。